MAEHIROBLOG.

大学病院勤務の理学療法士。慢性疼痛や心臓リハビリに関する情報をまとめています。

心不全の増悪を見逃さないためにーうっ血と低灌流ー

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心不全患者の観察のポイント

今回は、心不全の増悪を見逃さないためにと題して、心不全患者のフィジカルアセスメントのポイントを、順序立てて紹介していきます。

 

 

まず、はじめに心不全の徴候は大きく分けて

「うっ血」と「低灌流」

の二つに分けられます。

うっ血は、血液が渋滞している状態で、低灌流は、血液が全身に行き渡らない状態のこと指します。

特に急性期の医療機関で働くコメディカルは、心不全の増悪には特に注意を払い、介入していく必要があります。心不全の増悪を見逃さないためには、確認する所見をルーチン化しておくことがオススメです。

ただ、個人差はありますので、各個人、疾患の個別性や特性を理解した上で行うことが重要です。先ほども述べたように、急性期では基本的に心不全の状態は、日々刻々と変化します。そのため、特に命に関わるような増悪所見に関してはルーチン化して確認しておくことは、悪いことではありません。

特にリハビリテーションセラピストの場合は、多少なり身体的なストレスをかけていくことが多いです。そのため、これらを知っておくことは有用と考えます。

それでは、まずこちらのツイートをご覧ください。

 

 

うっ血所見について

うっ血所見は、上から順番に確認しておくと分かりやすく、症状も掴みやすいように感じています。私も普段の臨床では、この順序で確かめるようにしています。

それでは、何故これらの所見が重要になってくるのか、いずれも代表的な心不全の所見ではありますが、確認の意味で一つずつ解説していきます。今回は、詳細な測定方法については、あえて書きませんので悪しからず。

<座位で頸静脈怒張の確認>

言わずと知れた、頸静脈怒張です。よく頚動脈と間違えることもあるので気をつけましょう。正常の方であっても仰向けの状態であれば、軽度の怒張を認めます。しかし心不全者においては、ベッド上のヘッドアップ姿勢30−40度程度でも怒張を認めます。少し注意してみれば確認できますのでさらっと確認しておきましょう。少し深掘りすると、頸静脈の怒張の程度によっても状態が変わってきます。それに関して、今年の心臓リハビリテーション学会でポケット・フィジカルというWebアプリが紹介されていましたのでぜひご確認ください。

<同時に呼吸補助筋の確認>

次に、同時のタイミングで呼吸補助筋を確認します。心不全が増悪している場合、肺うっ血により呼吸困難が生じている可能性が高いです。そのため、僧帽筋や斜角筋、胸鎖乳突筋などの呼吸補助筋を確認します。視診で過活動を確認しても良いですし、触診して実際に硬さや圧痛を確認できるとより良いと思います。

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<呼吸音で水泡音、胸水があるか>

前述した通り、肺うっ血が生じている場合、肺野全体に水泡音が聴取されます。また肺うっ血により胸水が貯留している可能性が高いので、聴診や打診などを用いて評価していきます。胸水が貯留していると、下葉で呼吸音の減弱や消失などが分かりやすく聴取できます。

<心音でⅢ音が聞こえるか>

Ⅲ音(心室充満音)は心尖部で聴取されます。心尖部の位置は、左胸部第5肋間と、鎖骨中線の垂線の交点です。成人では、うっ血性心不全、拡張型心筋症などで左室拡張期圧が上昇し、左室内腔の拡大によって発生します。心音の聴診は、私もそんなに得意ではありませんので、経験あるのみです。頑張りましょう。

<右季肋部で肝臓の張りがあるか>

肝臓には、心拍出量の約4分の1に相当する血液が供給されているため、心不全ではその影響を大きく受けます。心不全増悪時には、肝臓のうっ血も急速に進み、それに伴い肝被膜が急速に伸展するため、右季肋部に張りが生じたり、痛みを生じることもあります。特に急性心不全で最初の介入では確認しておいたほうが良いポイントになります。

<下腿で浮腫を認めるか>

うっ血肝の影響も合間って、血液の渋滞が起こるため下腿に浮腫を認めます。浮腫の種類によってある程度、症状が推測可能な場合があります。心不全増悪の場合、塩分過多が原因となっていることが少なくありません。その場合、浮腫は圧痕なかなか戻ってきません。反対に、圧痕の戻りが早い場合は低アルブミン血症が疑われます。あくまでも推測になりますが、浮腫もただ圧迫するだけではなく、詳しく見ていけると良いですね。

<起座呼吸の有無>

起座呼吸に関しては、初めに確認しても良いかもしれません。どちらにせよ起座呼吸が生じている場合は、心不全が増悪している可能性が非常に高くなりますので、積極的な運動療法は避けたほうが良いでしょう。余談になりますが、いつも学生に胸水貯留による呼吸困難を説明するときには、水の半分入ったペットボトルを使用しています。

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「水に浸かった部分は呼吸に関与しにくくなる。上中葉に比べて、下葉は大きいから寝てるほうが苦しくて、起きたほうが楽になるよね。」

 


といった感じで伝えています。これだと何となく理解してくれる印象です。

 

それでは次に低灌流所見について見ていきましょう。以下のツイートをご覧ください。

 

 

低灌流所見

低灌流所見の徴候は、5つのポイントに絞って見ていくようにしています。ここまで聞いて誤解していただきたくないのですが、これはあくまで参考で、順番通りに行う必要は全くありません。実際に患者さんの評価を行っていく上でオリジナルの最適解を見つけていく参考とになれば幸いです。

<小さい脈圧>

まず脈圧とは収縮期血圧拡張期血圧の値」のことです。
脈圧の基準値は30~50㎜Hg未満と言われています。脈圧が大きい場合には血管の弾性低下が考えられます。逆に、脈圧が小さく拡張期血圧が高い場合は、末梢血管の抵抗が強くなっていることが考えられます。低灌流の場合、血圧を維持しようと抹消血管抵抗が上がりますので、脈圧は低下します。

<四肢冷感>

一般的には四肢抹消の冷感と言われます。もちろんそうなのですが、もともと手足が冷たい冷え性の方がおられ、冷感が分かりづらいことがあります。普段から患者特性を理解していればいいのですが、なかなか難しいですよね。抹消だけではなく、前腕や足首、前脛部も冷感を感じることが出来る部位なので、合わせて確認しておくと良いかもしれません。私は、普段からほぼ前例に、前腕と下腿の周径を評価していますので、その際に普段の様子を確認し、念のために抹消だけではなく、前腕や下腿も両方触って確認しておくようにしています。

<傾眠>

意外と見落としやすいのが日中の眠気と集中力の低下です。これは脳低灌流の状態を反映している可能性があるため注意が必要です。これに気づくには普段から患者さんの様子を注意深く観察しておくことが重要になってきます。しかし毎日のように全ての所見を確認するのは難しいです。そのため、ある程度ポイントを絞っていくと変化も見逃しにくくなるのではないかと考えています。

<低Na血症>

様々な原因で起こりますが、細胞胞外液量が増加しているタイプは、体内総Na量の増加より体内総水分量の増加のほうが上回っている状態で心不全や腎不全などの浮腫をきたす疾患でみられます。所見ももちろん大事ですが、血液検査も合わせて確認しておくと良いですね。

<腎機能悪化(尿量低下)>

急性心不全の場合、尿量管理のためにバルーンカテーテルが留意していることがほとんどだと思います。電子カルテなどで総量だけを確認するのではなく、尿量が低下して色が濃くなっていないか、利尿剤の効果は出ているかなど、実際に目で確認しておくことも非常に重量なのではないかと思います。

 

最後に

長々と書いてきましたが、以上が心不全の増悪を見逃さないためのポイントになります。うっ血低灌流で分けておくとポイントが絞りやすく、症状にも繋げやすいのではないかと考えます。

特に私は急性期の病院に勤務しており、日々症状が変化する心不全急性増悪の患者さんを見ています。そのため、これらの評価を行うことでリスク管理を行っています。

個人的に

リスク管理は引き出しの多さがモノを言う。」

と思っています。

つまり、何が起きるか常に予測し、患者の変化に一番早く気づくことが重要ということです。急変時にどう動けるかということは、もちろん大事なのですが、それよりもリスクを予測できる能力が必須であると感じています。

これは、職種関係なく身につけていくべきことだと思います。

今回の記事は、リスクを回避するために最低限知っておくべき知識のスタートラインとして活用していただけたら幸いです。最後まで見ていただきありがとうございました。

 

心臓リハビリテーション学会参加レポート

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2019年7月13〜14日にかけて大阪で開催された日本心臓リハビリテーション学会に参加してきました。今回は簡単な参加レポート(第1弾)です。お手すきの方はお読みください。日記のようにつらつらと書いていくつもりです。

 

 

心リハイノベーション〜行動医学からICTまで〜

本学会のテーマは心リハイノベーションでした。 

 

イノベーションと言われても、実際ポカーンと思う人も少なくないでしょう。

 

心臓リハビリテーション(以下、心リハ)は運動療法や運動処方だけではなく、包括的なリハビリテーションが当たり前となった現在はテーマにあるように分野が多岐に渡ります。

 

今回も臨床を行なっていく上で非常に参考になった講演が多数ありましたので、その中から抜粋して、少しずつまとめて行きたいと思います。

 

超高齢社会の対応 ー疾患の性質変化と医療の在り方ー

早朝に起床してから到着までに約4時間。

 

サンダーバードを乗り継ぎやってきたので、到着した頃には、お目当ての心不全緩和ケアのシンポジウムが終了間際と出鼻をくじかれました。

 

その次の産学協創シンポジウムより、まずは経済産業省の江崎禎英さんより講演がありました。

 

正直に言うと、官僚の方だから、現場のことなんてわかってないんじゃないか。などと感じていました。

 

しかし、実際にお話を聞いてみると、全く違いました。

 

現場の状況は非常によく理解されており、想像以上に未来を見据えて戦略的に物事を捉えていました。

 

まさにファイナンス思考

 

特に、おっしゃっていたのは現代人の「高齢化」の認識の歪みです。

 

「これからの時代を恐れることはない。どうやって楽しむか考えよう。」

 

これが正しい考え方、だそうです、

 

日本は2060年に超高齢社会どころか、高齢化率*135%超超超高齢社会を間近に控えています。

 

それもそのはず、誰もが健康で長生きすることを望み、それが可能になれば、社会が高齢化するのは必然的です。

 

言わば、高齢化社会を求めて人間は進化してきたのかもしれません。

 

 そのため、講演の中で江崎さんは、超高齢社会から健康長寿社会への変革を戦略的に行っていくとのことでした。

 

超高齢社会から

  • 高齢化率21%超(単に高齢者の比率が増えただけ)
  • リタイア後の余生を送る人が増加

健康長寿社会へ

  • 自律した生活の確率(存在意義を感じられる)
  • 社会的役割と自由が確保される社会
  • 医療・介護はあくまで自律をサポートする仕組み

 

人生100年時代の今

与えられた時間を如何に楽しく、健康に生きるか。

二週目の人生における「幸せの形を」見つけること。

 

このマインドが非常に重要になってくるようです。しかし、現代人は信仰(宗教)がないからメンタルが弱いのが特徴とおっしゃっていました。

心リハにおいても上記の観点、つまりソーシャルフレイルについて急性期から対応していく必要があると感じました。具体的な案は今後考えていくこととします。

 

本日は、最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

次回へ続く

 

 

 

*1:高齢化率:全人口に占める65歳以上の比率

新人を責めてマウントを取るのは時代遅れだ!

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本日は勤務先で行われた学会の予演会での出来事について、少し考えたことがあったのでまとめて行きたい思います。

 

普段とは全く関係ない内容となりますので、ご了承ください。

 

 

まずはこちらをご覧ください。 

 

こちらは僕が先日ツイートしたもので、少しだけ反響を頂けました。

 

うちの部署では新人(1年目)が県学会で発表するのが通例となっており、学会前や抄録提出前には、予演会が開催されます。これはセラピスト界隈であれば、どの病院でも行われていると思います。

 

そこでの一幕になります。

 

 

彼(新人)は予演会やその前から、かなり疲弊しきった様子でした。

 

 

その彼に対して先輩(経験年数10年弱)は厳しく責め立てるように質問(質問と呼べる代物ではなかった)をしており、新人も困惑した様子であったため、僕が上記の質問返しをした訳です。

 

僕の行動に対して寄せられた言葉として「勇気がある」や「私も真似したい」などと嬉しいお言葉がありました。

 

しかし、重要なのは僕の行動ではなく、部署に新人を育てていくという雰囲気が感じられないことが問題と思いました。

 

 

新人の発表に関しては着眼点は良かったのですが、臨床推論や同職種を含めた多職種連携が不足していました。

 

そのためそこをカバーするためにはマンツーマン指導では不十分と言わざるを得ません。 

 

指導者の資質によるものも大きいかもしれません。

 

しかし実際は理学療法作業療法、言語聴覚療法だとかそんなことは関係なく、職場全体で新人を育てていくという意識を高めていくことが重要と考えます。

 

それが新人の成長に留まらず、部署全体のベースアップにつながるのではないかと考えています。

 

普段からスタッフ全体が新人を気にかけ、積極的にコミュニケーションを図っていくことが、全く出来ていないので今後の課題となりそうです。

 

 

今回の件があり、来年度の目標は「アウトプット」に「成長」を付け加えました!

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

スタートバックスクリーニングツール(STarT Back screening tool)について

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今回は看護師の腰痛調査(仮)に使用する予定のスタートバックスクリーニングツールについて簡単にまとめていきたいと思います。

 

 

STarT Back Screening Tool(スタートバックスクリーニングツール

イギリスのKeele Universityが中心となって開発された質問形式の評価になります。9つの質問によって、その腰痛が慢性化するかどうかを「低リスク」「中度リスク」「高リスク」に分類します。


その分類により、推奨される治療方針が提示されており、腰痛の予後(慢性化しやすいかどうか)をある程度予想することが可能になります。既に日本語版スタバも翻訳され広く使用されています。

9つの質問だけなのでシンプルで分かりやすいという利点があります。その他にも推奨される治療方針が提示されているため、今後のアクションにも繋げやすいです。

 

例えば、高リスクがかなり多い割合で認められた場合は、単なる腰痛指導だけではなく、社会的背景を踏まえた対応が必要になると考えられます。

 

そのためには看護師の働いている環境や社会背景、精神心理的ストレスの状況などを深掘りしていく必要があります。

 

看護師の働く環境とは

今回の調査対象に考えている、集中治療領域の看護師の環境について考えてみます。

 

まず看護師に共通する環境として代表的なものとして以下の2つが挙げられます。当たり前なところですが、しっかりと抑えておきたいところでもあります。

 

  • 女性が多い
  • 勤務が不規則(交代勤務制)

 

それとなぜか肥満の方が多い気がするのですが、この問題もいずれ考えたいと思っています(肥満は腰痛のリスクでもあるので)。

 

集中治療領域に限定すると以下のものが考えられます。

 

 

これらの理由から集中治療領域の看護師は腰痛の有訴率が他の病棟看護師よりも多い割合で認め、慢性化するリスクの高いのではないかと仮説を立てています。

 

日本看護協会も腰痛については問題視しており、色々と対策を立てているようですが、推奨しているのは補助具の活用や腰痛体操なるもので、看護師自身のセルフケアという面には目が向けられていない状況です。

 

どうしても看護は奉仕、自分の体は二の次という方が多いようです。悪いことではないですが、これも視点を増やしていけるとより良い考えています。

 

腰痛予防対策について | 日本看護協会

 

 

つらつらと書いてきましたが、看護師の仕事を知るために1日密着(実際に体験する)とかをやろうかとも考えています。知らないと単なる想像でしかないので、、

 

また、思考過程のメモとして少しずつまとめていきたいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

急性腰痛と慢性腰痛

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腰痛の時相

腰痛の時相は大きく分けて急性腰痛と慢性腰痛に分けられます。腰痛診療ガイドライン(2012)では発症からの期間が4週間未満を急性腰痛、4週間以上で3ヶ月未満を亜急性腰痛、3ヶ月以上を慢性腰痛と定義しています。

 

しかし、実際の臨床では発症期間で分けられない症例が多く存在するのも事実です。

 

要因が異なる

急性腰痛は要因が特定でき、実際に組織の損傷が生じているもの(腰椎椎間板ヘルニア、脊椎圧迫骨折など)であり、慢性腰痛とは心理社会的要因などが複雑に絡み合い、組織の損傷から予測できる痛みを超えて生じているものと考えることができます。

 

つまり腰痛は急性期から慢性期にかけて疼痛の原因が変化していきます。以下の図がわかりやすいです。

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参考:非特異的腰痛のリハビリテーション

 

時相と要因を考え評価する

腰痛を慢性化させないことの重要性は言うまでもありませんが、その腰痛は現在どの時相にあるかをしっかりと把握しておくこと非常に重要です。

 

また要因が特定できるものなのか否かを、評価していくことが理学療法を提供していく上で必要になります。要因は急性から慢性に至る経過で変化していきます。

 

正しい治療、管理が施されなかった例では、一見慢性腰痛に見えるが、実は急性腰痛だったということもあるかもしれません。

 

これらの視点が加わることで、より対象者のニーズに応えることが可能となるのではないでしょうか。

 

 

働き方改革やるなら腰痛対策も一緒にやろう。

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最近、特に働く人の腰痛について考えることが多く、今日も考えていました。

私は普段、脊椎術後のリハビリテーションを行うことが多いですが、日々患者さんと触れ合う中で、自分たちもこのような状況になったらどうしよう、と考えることが多々あります。

 

看護・介護職の約半数は腰痛持ち

一般的に看護師を初めてとする医療職、特に患者と触れ合う機会の多い職種は腰痛が多い印象を受けます。実際に腰痛診療ガイドライン2012でも職業別の腰痛有訴率は看護 46〜65%介護 63%と非常に高い割合となっています。

 

また、ガイドライン自体が2012年に発表されたものであり、先に述べた腰痛有訴率の報告も2001年の調査を元にしています。そのため、さらに高齢化が進行した現代において、看護・介護職の腰痛有訴率は上昇している可能性も考えられます。

 

働き方改革には腰痛対策が必須

政府の重要政策のひとつに位置付けられている働き方改革ですが、これには腰痛対策が必須となると考えています。

 

働き方改革が行われる背景として、労働者人口の減少への対策が大きな要素としてあげられます。労働生産性向上は必至課題に挙げられ、ITやAIなどのテクノロジーを駆使することなどが考えられています。

 

しかし、どれだけテクノロジーを駆使しても難しいのが、労働者の腰痛です。

 

今後の労働社会で、腰痛は社会問題にまで発展するかもしれません(もうしてるかも)。更に腰痛は労働生産性を低下させるとの報告も多数あることから、働き方改革において腰痛対策は万全を期し、準備しておかなければならない課題なのです。

 

これからの労働を見据えて 

腰痛は医療・介護業界問わず、日本で労働者の大きな問題になって行くのではないかと考えています。

そのために理学療法士としてできることは何か、ということを常日頃考えており、まずは近くのコミュニティから、この考えを伝えていこうと思っています。

 

 

このまま行けば1億総腰痛社会なるものが待ち受けているのではないかと戦々恐々としていますが、それを救うのが我々理学療法士の使命と考えています。

ODIとRMDQ

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今回は一般的に使用されている腰痛評価法のうち、疾患特異的つまり腰痛に特化した評価法について以下の2つを説明していきたいと思います。広く日本でも使用されている評価であり、患者立脚型(患者の主観的な評価)の評価法となっています。

ODI(Oswestry Disability Index

世界的に使用されている評価法で1976年にversion1.0が発表され、改良されたversion2.0が2000年に報告されています。普段使用する場合はversion2.0を使用します。ちなみに私は6ポイントでした。

整形外科スコアリング: 日本語版 Oswestry Disability Index(ODI) 2.0
質問は10個で答えは影響の度合いによって、0点から5点までの6段階から回答し、10問の回答を合計します。数値が小さいほど良好です。

SF-36とも十分な相関関係を示しており、特に身体面のサブスケール PF(physical functioning)と強い相関があると報告されています。

MCID関しては、Meadeら1)は4ポイント、米国のThe US Food and Drug Administration(FDA)は脊椎固定術の有効性は15 ポイント以上としています。

最近では心理的な側面も考慮した評価表が多く開発されており、その点で言うとODIは多少劣っているかもしれません。しかし広く使用されてきた評価であるため、過去の膨大な先行研究と比較すると言った点ではメリットは大きいものがあります。

 

 

RMDQ(Roland-Morris Disability Questionnaire) 

こちらもは名称の通りローランドとモーリスらによって作成されました。この評価が1983年とODIより少し後になります。

 

RMDQは腰痛によって日常生活が障害される程度を評価する尺度としています。日常よく行う生活行動が腰痛のために障害されているかどうかを尋ねる24 項目から構成されています。各項目にはいいいえで回答する形式ではいと回答された項目の数が得点となります。ちなみに私は4点でした。RMDQもODIと同様に海外のデータを含め多くの先行研究と比較できるメリットがあります。詳しいマニュアルはこちらからどうぞ。

 

多くの症例ではODIとRMDQのどちらを用いても十分対応可能と考えられますが、床・天井効果の点で考えると、より慢性期の重症度の強い母集団ではODIが、軽症例に RMDQの使用が推奨されています。

 

 

腰痛の症状は多彩であり、腰痛評価のゴールドスタンダードは存在しないと言われたりもしています。その人の症状や社会背景を考慮した評価が必要ということですね。

 

最後までお読み頂きありがとうございました。

 

<参考文献>

1)Meade T, Browne W, Mellows S et al. Comparison of chiropractic and outpatient man- agement of low back pain: a feasibility study. J Epidemiol Commun Health 1986; 40: 12‒17.